「図解プレートテクトニクス入門」(木村学・大木勇人)

地球はあたかも生きもののよう

「図解プレートテクトニクス入門」
(木村学・大木勇人)
講談社ブルーバックス

現代では「大陸が動く」といっても
誰も驚かないでしょう。
中学校1年生の理科の教科書に
しっかり載っているのですから。
でも、大陸が動く原理を理解するのは、
本当はとても難しいことです。
本書はその名の通り、
豊富な図をもとに大陸が動く
=プレートテクトニクス理論について、
わかりやすく講義しています。
しかも、大陸移動説の生い立ちから
最新の地震研究の成果まで、
幅広くかつ懇切丁寧に
説明されています。

1章・2章
ウェゲナーが唱えた
大陸移動説のあらましと
その歴史について記されています。
地球のプレート構造が
よくわかるしくみになっています。

3章・4章・5章
そもそも岩石とは何かからスタートし、
マントルから海洋プレート
(海の底の岩盤層)ができるしくみを
紹介しています。
加えて、プレートが動くための
巨大なエネルギーである
「マントル対流」について
解説しています。

6章・7章・8章
プレートの沈み込みと
衝突するプレートによって生じる
大地の大規模な変化について
述べています。
そして、プレートの動きによって
引き起こされる地震の仕組みについて
解き明かしています。

本書を読むと、
地球はあたかも生きもののように
ダイナミックに活動していることが
よくわかります。
その地球の活動の一端として
地震が生じているのです。
こうした一連の地球のメカニズムが、
丁寧な説明だけではなく
豊富な図版によって
視覚的に理解できるように
工夫が凝らされているのです。
「図解」の表題に間違いはありません。

ところで私が中学生の頃の教科書には、
この大陸移動は載っていません。
したがって、
40代以降の大人のみなさんは、
プレートテクトニクス理論を
義務教育では学習していないのです。

また近年高校理科では、
物理・化学・生物に比べ、
地学の選択者が激減しています。
大学入試で2次試験に地学が課される
ケースが少ないからです。

この2つの状況を、
私はいつも憂いています。
日本に住んでいる限り、
地震災害は避けられないのです。
日本人として最も必要な
自然科学の知見は、
この「地震の起こるメカニズム」だと
私は考えます。
しかし、日本人の多くが、実はこの
「日本列島のプレート構造」を
理解できていないのではないかと
思うのです。
本書を中学校3年生、そして高校生、
さらには大人のみなさんに
広くお薦めしたい一冊です。

※参考までに章立てを
1章 大陸移動説の成り立ち
2章 海洋底拡大説から
   プレートテクトニクスへ
3章 地球をつくる岩石のひみつ
4章 海嶺と海洋プレートのしくみ
5章 なぜ動くのか?
   マントル対流とスラブ
6章 沈み込み帯で陸ができるしくみ
7章 衝突する島弧と大陸のしくみ
8章 プレートテクトニクスと地震

(2019.5.30)

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